逃避 の解説
逃避という小話ですが、よくわからない方がたくさんいると思いますので、ちょっと解説しますね。はい。
これは、主人公(20代青年)の世の中からの逃避を描いています。
情景としては、職場と実家に手紙を残して姿をくらます、いわば彼は失踪したわけです。
成人が失踪宣言書を残して失踪した場合、警察は家出とみなし事件性無しと判断し、おそらくは捜査には至らないことであると思います。
主人公は、そういうのを事前に調べて失踪するわけですが。
失踪は少し前から考えていたということです。
ただ、主人公は自分がなんでこんなことしたのか…そもそも失踪の理由が自分の中ではっきりしていませんでした。
深夜のネットカフェの中で理由を考えます。周りの人間にこんなにも迷惑をかけてまで、自分が失踪した理由はなんであったのか。
今の仕事のやる気がなかったにしても、退職届を出して正式に退社すれば済むことであったのに、一体なぜ自分が事に及んだのか。
疑問のなか、彼はトイレに向かいます。
トイレのなかで大きな鏡に映った自分を見た瞬間、彼は大体のことを理解したのでした。
鏡に映った自分は、まるで自分ではない誰かのように笑っていたのでした。
自分は失踪したかったのだ。理由は、ただそれがしたかったから。
彼はそこで自分の二面性にはじめて気がつくことになります。
ようは、彼のなかには自分が起こす問題を心の底から楽しんでいる自分と、それをくよくよと悩む自分がいて、行動を起こす自分と、今悩んでいる自分はそもそも違うものであるのだという認識がはじめて誕生するわけです。
うん。
ようは、多重人格者だったって
ことですね。はい。